自治体・企業

愛犬家へのマナー啓発

マナー違反の現状

迷惑行為

犬の飼育者が増える一方で、マナーの低下も叫ばれはじめています。何がマナー違反で、なにがそうでないかという定義は別として、自治体や公園管理者に寄せられるクレームから、近隣の人が『迷惑』と感じている行為がわかります。寄せられるクレームの多くは、下記のようなものです。

マナー違反に対するの意識の相違

一口にマナー違反といっても、犬を飼っている人が思うマナー違反と飼っていない人が感じているマナー違反には、やや差があります。

ある東京都の公園で、アンケートを取った結果から、一番のマナー違反の種類は? との質問に犬を飼っている人の80%の人が『放置ウンチ』と答えたのに対し、犬を飼っていない人の感じる迷惑度の第一位は50%で『どこでもオシッコ』という回答でした。また、約80%の人が、なんらかのマナー違反による迷惑を被ったことがあると答えました。

マナー啓発の種類

1.知識啓発

わたしたちがマナーの啓発活動をしようと考えるとき、ふたつの種類に分けて対策を考える必要があります。

一つ目は、先のアンケートのように、犬の飼い主が他人の迷惑度について、知らずに起こしてしまうマナー違反です。何気ないオシッコを他の人がどのくらい嫌がっているか、また可愛い愛犬がリードから放れ、楽しそうに遊んでいる姿を他の人がどのくらい怖がっているか、などです。自分の犬が絶対、他の人に危害を加えないと思っていても、そのことを知っているのは飼い主さんだけであり、犬を見れば咬まれるかもしれないと思っている人は意外と多いのです。

まずは、犬を飼っていない人が何をどう感じているのかを正しく情報として知らせていく必要があるのです。これを『知識啓発』と呼びます。

2.遵守啓発

もうひとつは、放置ウンチに代表されるように、迷惑なのはわかっているが、面倒くさいなどの理由で守らないマナー違反です。これは、犬の世界だけでなく、ゴミのポイ捨ても同様です。こちらのマナー違反を啓発することを『遵守啓発』と呼びます。

マナー啓発の方法

マナー啓発は2通りに分けて対策する

同じマナー違反と言いながら、これを啓発していこうとすると手法をふたつに分けて考えなければなりません。

1番目の『知識啓発』では、マナー教室やマナーブックなどの配布により、マナー違反を軽減することができます。上手なオシッコのさせ方や、遊ばせ方を指導していくことも出来ます。これは、飼い主さんが知らないだけのことなので、知らせることにより守ってもらえるからです。

しかし、2番目は、もともと守ろうとしない人たちに対する啓発ですから、講習会には出席しませんし、配布物も読もうとしません。この『遵守啓発』に関してもっとも効果があるのは、愛犬家同士の相互監視力にあります。

愛犬家同士の相互監視力を活用する

実は、毎日散歩で顔を合わせ挨拶をしたり、お話をしている『お散歩仲間』間では、あまりマナー違反は起きないのです。マナー違反をしている人の多くは、みんながいない時間帯に散歩をしていたり、近隣の愛犬家仲間と交流をしない人に起こりがちです。

これには、お散歩時間帯が合わなかったり、犬が他の犬と仲良くできないなどの理由がありますが、毎日顔を合わせ、挨拶を交わす間柄では、なかなか目の前でのマナー違反は起きにくいのです。逆に言えば、近隣の愛犬家同士、声をかけあって、なるべく一人にしないことや、犬の行動がどうであれ、疎外感を持たせないことが、地域のマナー向上につながると言えます。

従って、2つめの『遵守啓発』を実践する手法としては、地域の愛犬家の顔がなるべく合うような方法や施設の建設が有効です。地域の犬のイベントやドッグランの設置なども有力な方法です。しかし、『しつけ教室』のように犬や飼い主のレベル向上を目的としたイベントには、これらの人は参加したがりません。要は、犬のしつけレベルや飼い主の意識レベルに関係なく、気楽に犬の飼い主同士がまず顔を知り合える環境作りが必要なのです。

マナー向上に役立つ構図を理解する

町の行政レベルや公園管理方法として、犬の入れるゾーンを限定したりする施策も時に見受けられますが、この手法はあまり感心しません。

犬を飼っている人たち VS 犬を飼っていない人たち

との構図は、マナー向上にはあまり貢献しません。むしろ、お互いの理解度を薄め。お互いのクレームが増加してしまう傾向があります。犬を飼っている人が一団ではなく、犬を飼っている人の中にもマナーを守り地域と共存しようとする人と、マナーを守らない人がいることを正確に知る必要があります。特に、マナーを守らない人をもっとも嫌っているのは、犬を飼っていない人ではなく、犬を飼っていてマナーを守っている人たちなのです。従って、もし地域の町や公園でマナーの向上を図るのであれば、

犬を飼っていてマナーを守る人+犬を飼っていない人 VS 犬を飼っていてマナーを守らない人

という構図で施策を考えた方が効果が上がります。マナーを守ろうとする人たちは、飼っていない人への配慮や町ごとのルールも守ろうとします。犬を飼っていない人たちとも十分意識の連携が図れるのです。マナーを正しく守っている人たちがいることを犬を飼っていない人たちに知らせることも、クレームの減少に役立ちます。犬という動物が町を汚しているのではなく、一部のマナーを守らない人たちの責任であることを明確に知らせることができます。

具体的方法

具体的な公園管理例から言えば、犬を入れるかどうかを検討することは効果がありません。また犬の入園地域を隔離しても、マナー向上やクレーム減少にはつながらず、逆に地域の敵対感を増幅させてしまうこともあります。しかし、マナーを守らない人は入れないという方針であれば効果が上がります。逆に、マナーをちゃんと守れる人ならばと限定した上で、快適な空間を提供していくことも効果が期待できます。

自治体や公園管理者が配布するマナー啓発パンフレットについても、愛犬家だけに配布するのでは意味がありません。犬を飼っていない人に対しても、公園の利用方針や管理者の愛犬家に対する意識をはっきり伝える必要があるのです。そうしたことで、

犬を飼っていてマナーを守る人+犬を飼っていない人

という連合軍を形成することが出来、マナーを守ろうとしない人に対しての相互監視力が強化されることになります。

マナー違反は生活上の習慣性のものでもあるので、はじめは仕方なく行っている動作でも、習慣になれば意外と簡単に守れるようになるものです。最初の一歩は、悪い習慣を起こさせない活動からスタートし、やがては良い習慣に変化させることが『遵守啓発』においては有効です。

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